〒364-0035 北本市西高尾3167ヒライビル101 TEL/FAX 048-592-2814

10月号「自由の喜びをかみしめ、自分らしく、オリジナリティーをもって」

10月号「自由の喜びをかみしめ、自分らしく、オリジナリティーをもって」

このエントリーをはてなブックマークに追加

「自由の喜びをかみしめ、自分らしく、オリジナリティーをもって」

9月28日、2020年の東京オリンピックの追加競技として、スポーツクライミングのほか4競技が国際オリンピック委員会に推薦されることが決まった。実際に採用されるか否かは16年8月に行われる国際オリンピック委員会総会での決定を待つことになるが、現在のところ、スポーツクライミングは野球や空手と並んで有望視される競技の一つとなっている。合わせて、日本はスポーツクライミングの世界でフランスやオーストリアと並ぶ世界三大強国の一つと言われ、オリンピック種目となったら入賞は間違いないというのだから、日本のクライミング愛好者の間で俄然期待が高まっているのは確かだろう。

しかし、クライミングの世界でも「フリーですかアルパインですか?」という質問が頻繁に交わされるように、同じクライミングと言っても、山に登る一つの方法として、岩が乾いていようが濡れていようが、雪や氷が付いていようが、アブミやアイゼン、ピッケルなども駆使して高みを目指そうというアルパインクライミングと自分の素手だけで乾いた岩を相手に技術を競い合うフリークライミングでは、住んでいる世界がかなり違う。フリークライミングの安全性を高め、純粋に競技化したものがスポーツクライミングなのだから、冒険を旨とするアルパインクライミングとスポーツクライミングの世界が別のものを目指しているのは明らかで、それぞれの愛好者の気質にも大きな違いが見られるのも間違いないところだろう。

かく言う私は、縦走登山も好きだが、乾いた岩も濡れた滝も好き、凍った滝も雪稜も好き、山スキーを駆使して所かまわず滑りまくるのも好き、というオールラウンド志向なので、正真正銘のアルパイン派と言って良いだろう。もちろんアルパイン派の私でも、室内壁でのクライミング練習は欠かさないが、スポーツクライミングの競技会にはそれほどの興味はないので、オリンピック種目になるかどうかという話には正直大きな関心はない。オリンピック種目になることでクライミングの裾野が広がればという期待はあるが、逆に安全性の高いスポーツクライミングに注目が集まり、より危険度の高い外岩でのクライミング、剣岳、谷川岳などでの本番クライミング、沢登り、アイスクライミングなどを敬遠する空気が出てきてしまうのだとしたら残念だとも思う。

そもそも自分が楽しいと思うやり方で、自由に登る、そしていい登山だったかの評価も自分で下す、これが登山の醍醐味であり、ルールに則り点数を競い合う他のスポーツにはない登山の魅力だろう。尾根を縦走する人、沢を遡る人、岩を攀じる人、好みは様々で、みんな自分のやっていることが一番楽しいと思っている。「こんなに楽しいんだぞ」と人に自慢したくて記録を書いたりはするが、楽しさには明確な基準はないので、自分の方が上だ下だと一喜一憂することもない。もちろん、身体活動である以上、俺の方が体力があるとか、彼女の方が岩に登るのは上手いとかの比較はできるが、山で使う力には様々なものがあるので、点数競技のような絶対性はないから、みんな自分らしさを大切に自由にやっている。この多様性、多元性がいい。山には春夏秋冬・四季それぞれの美しさがあるし、コース取りも自由自在、登山道も複数あるし、沢や岩から登ることまで考えれば登山ルートは無数にあるとも言える。こんな多様性に富んだスポーツが他にあるだろうか?山の定番とも言える百名山だって、登山月刊誌「岳人」では、「日本百名山冬期登頂記」を連載しているし、沢登りでの百名山登頂、自転車での百名山踏破を狙っている御仁もいる。

私は、この10年くらいの間に、短い山スキーを駆使して、日本の名峰を巡る山スキールートをいくつも滑ってきた。たとえば私が「ツールド白馬」と呼んでいる山スキールートは、猿倉から白馬主稜という雪稜をスキーを背負って登り、白馬山頂から黒部側の柳又谷の上部を滑り雪倉岳に出て、滝ノ沢から蓮華温泉に滑り込み、小蓮華岳に登り返し、金山沢を滑って猿倉に戻る3日間のコースである。コースと言ってもすべて雪の上なので登山道があるわけではなく、地図とにらめっこし、いろいろな情報を加味して自分なりのオリジナルなルートを考え実践したもので、他にも自称「ツールド剣」「ツールド谷川」「ツールド鹿島槍」などのルートを滑ってきた。こんなことができるのも登山の楽しいところ、自分が考え出したコースを実際滑って完走できたときの喜びは大きい。「自分らしくオリジナリティをもって」というのが私のコンセプトだが、私は、岩でも沢でも山スキーでも縦走でも、これからもそんな気持ちをもってやっていきたい。登山という自由なスポーツに出会えた喜びをかみしめながら。皆さんも是非、自分らしく、ちょっぴりのオリジナリティーをもって山に登っていきましょう。

 

上野 司

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です