〒364-0035 北本市西高尾3167ヒライビル101 TEL/FAX 048-592-2814

9月号 「地図をみること」がベテラン登山者への第一歩

9月号 「地図をみること」がベテラン登山者への第一歩

このエントリーをはてなブックマークに追加

今年の夏は、裏銀座の縦走、中央アルプスの縦走、北海道幌尻岳と、結構厳しい山にたくさんの仲間たちと登った。一日10時間を超えるような登山時間、2000m近い標高差の下り、連続する川の渡渉と、体力的・身体的にはかなり厳しい山を平気でこなす山の猛者がこの会にはたくさんいる。60,70歳代の方が多いこの会で、この体力というのは、大いに自慢していいことだと思う。

少し気になる点といえば、登山の途中、地図を見ている方が少ないということだ。知り尽くした山なら、地図を見ない登山もあるだろうが、おそらくその山域は初めての方が多いはずで、見ないということは登山コースについてはリーダーにお任せ、という意識が強いのだろうと思う。全幅の信頼を寄せられているリーダーの側としては、信頼されていること自体は嬉しいことなのだが、そのお任せ意識が、「自分が今どこを歩いていて、今日は何という小屋まで行くのか」という登山計画の基本的なところまで理解がいっていないということだと少し困る。

ベテランに連れて来られた登山初心者の女性が、ベテランの方が負傷してヘリ救助され、自分はヘリに同乗できないとわかった際、「私、ただついて来ただけなので、ここがどこかもわからないんです。地図も持っていません」と救助隊員に泣きついたそうだ。私たちの場合は、スタッフも複数いるし、山仲間も多いので、こんなことにはならないだろうが、何かの拍子に一人はぐれてしまうということも絶対ないとは言えないし、自分が今どこを歩いていて、どこが今日の目標地点なのかということは、集団登山、ツアー登山であっても、やはり一人ひとりが把握しておかなくてはならないことだろう。山小屋のスタッフから「今日はどちらまで?」と聞かれて、「リーダーに聞いてください」というツアー参加者はかなり多いというし、地図を見ないことと登山コース全体をつかんでいないということは無関係ではないのかもしれない。自分が今どこにいるかを知るには、たえず地図を見ていなければならない。「道に迷ったら見るように地図はザックにしまってある」という人がいるが、道に迷ってから初めて地図を見るのでは、ほぼ手遅れ。今いる場所が大体わかってこそ、地図を見てどっち行けばいいのかわかるのであって、全く今いるところが地図上のどこかわからない場合、ほとんど地図は役に立たない。

計画の立案、交通機関の手配、山小屋の予約など、めんどうなことを任せられるのがツアー登山の良いところなのだから、その点は任せれば良いと思う。しかし、地図を見て、今自分がどこを歩いているか、目的地まであとどれくらいかを知ることは、面倒というより登山の楽しさそのものだと思うし、リーダー・スタッフでない多くの参加者にも是非やってもらいたいことだ。読図というと難しく聞こえるが、今自分がどこにいるかを確認することだと思って、面倒くさがらず休憩時には地図を見てほしい。地図を見てたえず自分のいる場所を確認しながらの登山を少し続けていると、地図を見ない登山がきっと物足りなくかつ不安に感じてくるだろうと思う。

ロープを使った岩登りなど特別な登山を除いた一般ルートの登山では、成功するために必要な力の60%は体力なのだと思う。あとの20%がザックの背負い方、歩き方、水分や栄養の取り方、山小屋での生活の仕方などの山の生活技術、あとの20%が地図を読むことと天気を判断することだと私は考えている。それほどに体力は登山成功にとって重要な位置を占めるが、山を全く知らない体力抜群のサッカー選手が、雨天、強風、わかりにくい登山道などいろいろな条件下で登山を成功裏に終わらせられるかというと、はなはだ疑問だ。やはり、雨具の使い方などの山の生活技術、読図や天気判断などの力も登山成功には必要だろう。我が会のメンバーには、体力抜群、山の生活技術もよく知っているという仲間は多い。ただ、読図や天気となるとリーダー任せになることも多いので、力がつきにくいという点は否めないのかもしれない。

自分で考え、自分で悩み、自分で行動してこそ力がつくというのは、どんな仕事であれ趣味であれ、共通のことなのだろう。私たちの登山では、発表された企画に参加申込をするという形だから、登山のプランニングはリーダーにお任せするというスタイルだが、登山の実際の行動中に、よく地図を見ながら自分で主体的に登山をするのと、完全に「連れられ登山」になってしまうのとでは、2,3年山を登ったあとの、登山力量のアップには天と地ほどの差ができてしまうと思う。地図を見て考えながら、天気にも気を配りながら百名山を登りきった人は、間違いなくベテラン登山者と言っていいだろう。百名山を登りきってもなお、「連れて行ってもらっているだけなので、山の力はあまりありません」と自分自身が感じてしまうことのないように、山で地図を見よう。

アルパインクラブの登山では、「一度連れて来てもらった山には、次は自分がリーダーで来ると思って登山しろ」と私はいつも口をすっぱくして言っている。人は誰でも、初めは経験者に連れて来てもらうものだ。そこで山を知り、徐々に山の力をつけていくわけだが、「次は後輩を連れて、この景色を見せてあげよう」くらいの意識を持っているか、ただ登れたという結果だけに満足しているかで、その人の登山力量アップのスピードは全く違ってしまう。ことほど左様に、主体的に登るという意識の持つ意味は大きい。

この夏の登山では、現地でお会いした山小屋関係者や遭対関係者から、「よくまとまった力のあるパーティーですね」と褒められることが多かった。それくらい体力もあり、山の生活技術にも練達しているパーティーなのだから、ぜひ地図をよく見る本物のベテラン登山者を目指そう。地図を見る登山は、きっと登山に新しい魅力を加えてくれることだろう。

上野 司

 

« »

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です