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3月号 「ピケティ氏の著書から若者問題を考える」

3月号 「ピケティ氏の著書から若者問題を考える」

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「ピケティ氏の著書から若者問題を考える」

 フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」という本が世界的なベストセラーとなっています。普通なら手を出すこともはばかられるような専門書が飛ぶように売れ、本屋には特設コーナーが作られ、世界で150万部、日本でも13万部を越える売れ行きだといいます。なぜこれほど注目されるのか、私もつまみ食い的にではありますが、一読してみました。彼は、手に入る限りの膨大なデータを集めて、人類の富と所得の分配の歴史をたどり、世界的に不平等化が進んでいることを実証的に示しました。そして、恐慌や戦争などの一次的な例外を除いて「資本から得られる収益率は経済成長率を常に上回るという」法則を提示しています。働く人が頑張り、経済が成長することで得られる賃金の上昇分を、株式や不動産など資本を持つ者が、資本を利用して「お金がお金を稼ぎ出す」ように増えさせることによる資本の増加分が常に上回り、増えた資本が富裕層で相続され、格差は拡大していく、というのです。

経済成長の成果がすべて労働者の賃金上昇になるわけではありませんから、資本の収益率と実質賃金の上昇率という観点で考えたら、より一層の格差拡大は明らかでしょうし、日本では正規労働者と非正規労働者との賃金格差の問題もあり、事態はいっそう深刻なものがあると思います。来日したピケティ氏も、日本の経済を回復させるために必要なのは、賃金を上昇させることであり、若者が所得などで不利な状況におかれていることが問題である中、低所得者層や中間層に減税を行う一方、高所得者層の資本などへの累進的な課税を強化すべきだと提言しています。

先般、国会で面白い議論がありました。外食チェーン「なか卯」の新規採用者向けテストには、A挨拶、B月間重点目標唱和、C連絡ノート確認、D経営理念唱和、E接客用語唱和、F出勤打刻、G着替え、の7つの行動を入店後どの順序でやるかを問うた質問があり、その順序が議論されたのです。「なか卯」では、タイムカードを押す「出勤打刻」の行動を最後に行うのが正解とされているのですが、「使用者から義務付けられている行為ならば、そこから労働時間としてカウントされる」「そのあとに打刻せよというなら、おかしい。当然、指導しなければならない」と厚労相が答えたのです。厚労相の答弁は当然ですが、組合もなく、こういうことを「問題だ」とも言えない、弱い立場の非正規労働者がたくさんいることを感じさせる質問でした。

さて、山の世界に目を転じてみると、仕事の関係から山に行きたくても行けないたくさんの若者たちがいることに気づきます。若い人を山の会やアルパインクラブに誘っても、「休みが取れない」「有給休暇がないので、長い山は行けない」「人が少ないので、休みたくても休めない」「給与が少なく、登山用具代や交通費になかなかお金を回せない」という答えが返ってきます。山登りには「健康な心と身体」が一番大事だとは思いますが、やはり「休み」と「余裕のお金」は必要です。私としては、若者の休みに山行の日程を合わせたり、用具をレンタルできるようにして用具代の出費を少しでも減らせるようにと配慮することくらいしかできませんので、そこから先は政治の仕事なのだと思いますが、選挙にも行かない若者が多いと聞きます。「遊んでばかりいて、今の若者は何も考えていない」という批判をすることはできますが、自分の仕事や収入、将来どうなるかがすべて自分一人の責任だとされる文化の中で、あまり期待できない政治のことに関わる意欲も時間もなくなっているというのが実際のところなのではないでしょうか。

政治や社会が変われば自分の生活や未来も変わるという希望を作り出すことやブラック企業をなくし働きやすい職場を作ることといった大きな活動から、若者が気軽に山に行けるような山の会を作っていくことという身近な活動まで、若者たちを山に迎え入れるには様々な活動が必要とされているのだと思います。私もできる限り若者たちの応援をしたいと思っています。「若者に未来がない国に未来はない」そんな思いで、頑張ります。

上野司

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