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7月号 「日本の世界遺産を、世界の人たちとともに守り、育てよう」

7月号 「日本の世界遺産を、世界の人たちとともに守り、育てよう」

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 6月の初め、世界自然遺産の屋久島に出かけ、その大自然を存分に楽しんできた。シャクナゲの大群落と樹齢1000年を超える杉の巨木の森、この旅は、屋久島がやはり日本を代表する自然遺産であることを実感させてくれた。日本には、この屋久島を含め、知床、白神、小笠原と4つの自然遺産がある。文化遺産の方はと言うと、昨年の富士山に続いて、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が日本で14番目となる世界文化遺産に登録されることが昨日決まった。文化遺産の14をすべて言える人は多くないと思うが、登録順に並べると、法隆寺、姫路城、京都の文化財、白川郷、原爆ドーム、厳島神社、奈良の文化財、日光の社寺、琉球王国のグスク、紀伊山地の霊場と参詣道、石見銀山、平泉、富士山に富岡製糸場ということになる。

 世界全体でも、2013年までに、文化遺産759件、自然遺産193件、複合遺産29件が登録されていることでわかるように、自然遺産は世界の自然の中から「The best of the best」を選ぼうということからか登録数が少ない。それに対して、文化遺産への登録は数として圧倒的に多く、その半数以上がヨーロッパから選ばれており、また、世界遺産条約締約国190か国中、1件も登録物件を持たない国が30か国にのぼるなど、地域的偏りが激しいことが指摘されている。背景には、世界遺産リストの上位登録国が世界遺産委員会の委員国に選出される傾向にあり、委員が自国の申請物件を審議するという矛盾もあるようだ。

 そもそも、文化とは、生活の有りよう全体のことであり、どちらの文化が優れているとか劣っているとかいうものではないだろう。その意味では、世界の中で価値ある文化遺産を挙げれば、世界中の様々な文化の中から等しく選ばれてくるのが普通であり、国の大小、強弱や経済力の有る無しに影響されるものではないはずだ。

 ユネスコの行っている三大遺産事業には、これら「世界遺産」と歌や踊りのような「無形文化遺産」、記念的文書や映像のような「記憶遺産」があるが、記憶遺産の選定もなかなか難しい問題をふくんでいるようだ。屋久島の旅の途中で立ち寄った「知覧特攻平和会館」が、知覧基地を飛び立った特攻隊員の遺書「知覧からの手紙」を世界記憶遺産にと運動していたが、「日本からの視点のみが説明され」などの理由で、国内推薦の2件に入ることができなかった。来訪者に様々なことを感じさせ、考えさせる「記憶遺産」であることは間違いないが、特攻を美化するものになっていないか、当時の遺書に自由に思っていることが書けたのか、資料の「唯一性」や「完全性」はどうか、などの疑念を払拭することが出来なかったことが理由のようだ。

 日本にある様々な遺産が世界的評価を受けることはうれしいことだが、その際どの民族、国民も自分たちの自然や文化に誇りを持っており、遺産の登録が自然や文化の優劣を争うものではないことに思いを致さなくてはならないだろう。自国の自然や文化に対して誇りを持つとともに、他国の自然や文化に対しても崇敬の念を持つことが、世界平和の基本にあると思うからだ。

 世界遺産の富士山や屋久島には、世界中から多くの人たちが集まってくる。そして、これから富岡にも世界の多くの人が足を運ぶことだろう。そんな時、私たちは世界の人たちと気持ちのいい交流をしたいものだ。日本にある世界遺産は「世界の宝」でもある。そんな宝を世界の人たちとともに守り、育てたい。

上野 司

 

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