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10月号「オリンピック開催を草の根スポーツ発展の契機に」

10月号「オリンピック開催を草の根スポーツ発展の契機に」

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 2020年夏季オリンピックの開催都市を決めるIOC総会で、東京が開催都市に選ばれた。決まった日の朝、私は仲間たちと富士山の山小屋にいたのだが、皆うれしいというより、「びっくりした、どうして?」という感じのようだった。総会前の報道で、世界が福島の原発事故による汚染水問題に神経をとがらせているという話を聞いていたことが大きかったと思うが、原発事故問題をかかえるこの日本がオリンピックを招致する矛盾、そのことが根底にあったのだと思う。 帰宅後、世界の不安を払拭するために安倍さんが総会でどう話したんだろうと思いテレビを見て、またびっくりした。「状況はコントロールされている」「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3の範囲内で完全にブロックされています」と総会の場で述べていたというのだから。現状は、コントロールどころか制御不能に陥って、汚染水がどこから、どう漏れ出しているか全容すらわからないというのに。不安を払拭するのには、弁解がましくいろいろ説明するのではダメで、ウソでもいいから断言口調で「問題はない。後は私にまかせてください」というのが良いという作戦だったとしても、こういう作戦はありなのだろうか。この報道を見て、福島の漁師の方が「ふざけんじゃない。原発をコントロールできないから、汚染水にこんなに苦しんでいるんじゃないか」「完全にブロックされているなんて現場を知らないから言える」と憤るのも無理はないと思う。

 開催が決まっているロシアのソチでも、ブラジルのリオデジャネイロでも、準備の遅れや国民の五輪施設建設反対のデモなどで様々な混乱が生じている。そんな混乱に嫌気がさし、IOC委員の多くが、「今度は競技以外で煩わされたくない、無難に開催できる都市に決めよう」という消極的な選択で東京にしたという報道がされているが、当たらずとも遠からずという所だと思う。シリア問題、経済危機問題、原発問題と、各都市それぞれ大きな弱点を抱える招致レースの中で、安倍さんの説明を鵜呑みにしたわけではないが、ここはひとまず東京の確実さにかけてみよう、ということだったのだろう。いずれにしてもIOCの総会で東京が選ばれた。安倍さんも、あそこまで「問題ない」と国際的な場で表明した以上、本当に問題が解決するよう全力を尽くす重い責任があるだろう。

 私もスポーツ活動に関わる者の一人として、オリンピック開催を通じてスポーツへの関心が高まり、スポーツ環境が改善し、多くのアスリートたちが思う存分活動でき、多くの国民も気軽にスポーツを楽しめる社会になっていくのだとしたら、それはうれしいことだ。

 今回の招致レースで、東京開催を引き寄せた力の一つがアスリートの力だったことも忘れてはならない。多くのアスリートたちが五輪招致に向け、積極的に活動を続けて来たし、最後のプレゼンの場で、パラリンピック3大会連続出場、陸上走り幅跳びの選手・佐藤真海さんが、「私がここにいるのは、スポーツによって救われたからです」と自らの体験を時折声を詰まらせながら話したことも、多くのIOC委員の心を動かしたのだと思う。アスリートたちが、招致レースに参加するだけでなく、大会の組織委員会の中でも重要な位置をしめ、多くのアスリートたちの願いに応えるオリンピックになっていってほしい。


1964年の東京オリンピックを契機に、スポーツ少年団が全国にでき、ママさんバレーや歩け歩け運動も始まったという。国民がスポーツに関心をもち、行政もそれを後押しする、そんな形でスポーツがますます国民生活に根を下ろしていく。オリンピックと草の根スポーツは全く関係がないように見えて、底のところではつながっているのだろう。いや、つなげていかなくてはならない。オリンピック招致に成功したことで、原発問題はクリアされたのではなく、国際的に重い責任を負わされたと考えるべきだろう。この重い責任に応えて、国内外の知恵と力を集め原発の問題に解決の目途をつけること、そして、オリンピックが東京で開かれることを契機に日本を国民がもっと日常的にスポーツに親しめるような国に変えていくこと、それが国民の願いに応えるオリンピック開催ということだろう。メダルの数も大事だろうが、草の根でスポーツに取り組む者として、そんな視点でこのオリンピックを迎えたい。

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