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9月号「富士山の入山料問題を考える」

9月号「富士山の入山料問題を考える」

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 この夏、富士山で入山料の徴収が試験的に行われた。期間は725日から83日までの10日間で、今年の入山料支払いは任意だったが、一人原則千円の入山料を支払った人は約34千人、徴収総額は約3400万円に上った。静岡・山梨両県は、この結果と登山者へのアンケートをもとに、来夏の本格導入に向けて、詳細を検討するとしている。

 入山料徴収の目的は、大きく言って二つ挙げられている。一つは、観光ブームや世界遺産登録実現で急増する登山者数に歯止めをかけること、もう一つは、急増する登山者に対応したゴミ処理費用の急増やトイレ不足、登山者の安全確保などに必要な財源を確保することだ。入山料の徴収は、登山者数に歯止めをかけることと、環境整備費用の財源確保、この両方を一気に解決できる「一石二鳥」の手として期待がかかっているようだが、考えなければならない課題は多い。

 まず指摘しなければならないのは、登山者の増加によるオーバーユース問題を解決する手段として高額な入山料を取るという考え方が果たして正しいのかという問題である。京都大学の栗山教授の試算では、千円の入山料では登山者抑制効果は低く、入山料のみで現状水準まで抑制するためには少なくとも一人あたり7000円の入山料が必要とのことだが、世界の人たちに広く富士山の魅力に接してほしいという願いからの「世界遺産への登録」ならば、入山料を高くして来にくくするという解決方法は本末転倒ではないのか。これは、病院が混んでいて困る、保育所が入れなくて困るという問題の解決を、高額な診察費や保育料を取ることで「解決」しようという議論と同じではないのか。確かに、富士山、尾瀬、高尾山などの有名な山でのオーバーユース問題は登山者や登山団体自身が解決していかなければならない問題の一つだろう。しかし、山によって混雑する時期は限られており、マイカー規制に加えて、78月の土日やお盆など日や曜日を限っての事前申し込み制(先着何名とか、抽選とか)などの対策が本道だろうと思う。事前申し込み制は、制度運用に一定の労力とお金がかかることは間違いないので、その費用を申込者に負担してもらうことはあるだろうが、入山料を高くして登山者を減らすという考え方より、筋が通っているし、公正だと思う。もし、その労力と費用を避けたかったら、誕生月が1月の人は1日か11日か21日にしか登れないなどの方法も考えられるが、友人と登れないという問題は残るだろう。しかし、それでも繰り返しになるが、高額な入山料で登山を抑制するという考え方よりましな気がする。

 環境整備費用の財源を確保するために入山料を、という考え方は基本的にはまだ納得がいく。ただし、環境整備へのお金の使い方は使途を明確にして、トイレ問題を最優先にしてもらいたい。入山料の徴収に反対する人の意見では、公費が安易に関係者の飲み食いに使われたりとか、東日本大震災の復興予算が被災者支援になかなか回ってこない問題から、何に使われるかわからないお金は払いたくない、という気持ちを持つ人が多いようだ。今夏の試験徴収で、任意にもかかわらず多くの方が入山料を支払ったことに見られるように、「細かいことはわからないが、富士山がきれいになるならお金を出すのは惜しくない」という登山者は多いが、この善意を踏みにじるようなことは絶対に起こしてはならない。そもそも山を完全に安全管理することはできないし、今では、どこの山でもゴミの持ち帰りは普通だし、ゴミをやたらに捨てる登山者も少ないので、環境整備のお金の使い道はトイレの増設と清潔維持が中心になるべきだろう。ただし、これも、北アルプスなど他の山域では、山小屋のトイレの有料利用という形で対応していることを考えると、富士山の場合はなぜ入山料なのか、という問題に対して納得のいく説明が必要だろう。山の環境維持という問題は、日本各地の山の共通問題だろう。登山者の少ない東北の山では営業小屋は成り立たず、地元自治体が山小屋やトイレを作り、管理している。このように登山者が少ないことでの悩みもある。山の環境維持のために入山料が必要かどうかの議論の行方、そして入山料がいくらに決まり、どのように使われていくのかの行方、これらは日本全国の山の環境整備のこれからに大きな影響を与えるものと思われる。私たちは、山の環境にかけた負担を回復する費用は登山者をはじめ関係者自身が払うという考え方を基本にしつつ、今後の富士山の入山料問題の行方をしっかりと注視していきたい。

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